崇福寺と水上勉「その橋まで」
水上勉の「その橋まで」という作品には、岐阜の街の様子がいろいろと出て来ます。 長良橋・金華山・長良町・鵜飼舟・岐阜刑務所(平成元年に長良より岐阜市北西部則松に移転) そして、崇福寺が登場いたします。
岐阜刑務所を仮釈放された男を主人公にした作品です。その後、この男は前科があるということで あらぬ嫌疑をかけられたり、傷害事件に巻き込まれ、結局再び刑務所に戻ることになってしまったのです。
男は塀の中から、最後まで自分のことを信じてくれた保護司(崇福寺住職)に手紙を出すところで、 橋(長良橋)がクローズアップされるのです。
当山の先代・恵遠和尚が私に2〜3度話をしてくれたことがあります。水上勉さんに会う機会が2〜3度あったので、 「私は民生委員はやっているが、保護司はやっていない。勝手に使ったな。」と冗談っぽく話しかけたら、 何も答えず、ニコニコされていたそうです。
水上さんは同じ臨済宗の寺で多感な時期を過ごされた方であるので、刑務所のすぐ近くの崇福寺を 登場させられたのではないでしょうか。
そして、文中に出てくる保護司・愚堂和尚には、更生保護のあり方等に思いの深い水上勉さん自身の 姿が色濃く投影されていたのではないでしょうか。
毎日新聞 平成19年7月11日付 記事
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